有名な話だが、60年代後半に圧倒的な人気を誇っていたザ・モンキーズはテレビのバラエティ番組のために“作られた”バンドだった。その点では日本の“ずうとるび”(長寿演芸番組「笑点」から生まれたアイドル・グループ)と何ら変わらないのだが、ずうとるびとモンキーズの最大の違いは、モンキーズのメンバーが(ある瞬間から)本気でアーティストとしての存在意義を求め始めたことにあると思う。本作はザ・モンキーズの誕生から終焉までを詳細に追ったドキュメンタリーなのだが、「演奏もできない、ただの操り人形」という批判を正面から受け、ミュージシャンとして自立しようとするシーンには、何だか意味もなく心を打たれてしまう。ご存じのように、彼らはアイドルというポジションから抜け出せないまま終わってしまうわけだが…。‘67年のツアーのオープニング・アクトに無名時代のジミ・ヘンドリクスをフィーチャーするなど、「へー、そうだったんだ」的な発見も意外と多い。(森 朋之)
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